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「質の時代」のシステム改革 矢野 誠(岩波書店)


1.高質な競争は多様性の内部化により「健全な経済」を創る
(1)高質な競争のプロセスは、単純な「弱肉強食」「適者生存」でなく、
 競争の機会をいくつも与え、一つの競争で勝てなくても、別の競争で勝つ機会を与える
(2)負け組を作り出す可能性は小さくなり、多様なスペシャリストが生まれる


2.高質な資本市場発達のための施策
(1)ベンチャー・キャピタル市場の育成
(2)高級、普及といった株式市場の住み分け
(3)一般顧客利用可能な透明性の高い株式市場


3.銀行市場の質の低下
(1)銀行合併による巨大化が、競争の質を低下させ、長期金融市場を低下させている
(2)1995〜2000年のアメリカの公定歩合はほぼ5%に維持されていたが、日本は0.5%
(3)日米間の金利差を埋めるように為替レートは変動してきていないため、日本で円を借り、アメリカで運用するだけで高利益が得られる
(4)金融機関だけが短期資金市場で利益独占し、国内の中小企業へ資金は回らなくなった


4.「市場軽視」から「市場高質化」へのパラダイム転換
(1)1950〜1960年代の「イギリス病」施策
 強過ぎる労働組合解体、手厚過ぎる社会保障制度見直し
(2)1970〜1980年代のアメリカ
 大幅な規制撤廃と独占の解体(航空交通、電話産業など)
(3)日本の長期停滞の連鎖を切断するための私見
①行政:行政官の「政治任用制度」
 外部役員、外部監査役制度(アメリカでは既に定着済)
②司法:民事裁判における供託金の廃止
 起訴するための手数料廃止(現状100億の訴訟では1600万必要)
③立法:党議拘束の廃止
 政党所属議員全員に法案可否の同意見投票を拘束させない
 一票の重さの格差を自動的に埋めるシステム導入