Smily Books Blog 2023年7月更新中

知的財産マネジメントの真髄:理論と実践 京本直樹(2004新鋼リサーチ)

1.知的財産活用のマネジメント
(1)IT産業の日本企業の出願状況
・単体の技術だけでは製品が作れず、製品の製造には多数の技術が必要となる産業
 ①特許1件あたりの研究開発費は他の産業と比べると少ない
 ②製品のライフサイクルが非常に短い
 ③多数の特許で擦り合わせが可能
・市場を確保し、投資コストの回収を標準化で実現する必要がある
(2)IT産業における技術の標準化
・特許権者間で特許をプールし、一定の条件で使用者に開放
(MPEG-2LAだと555件以上の特許をワールドワイドでカバー)
 ①ライセンシーからの実施料を特許権者の必須特許保有数に応じて分配
 (ライセンシーと特許権者間は通常プール特許管理会社が仲介)
 ②独占禁止法との関係
  新規参入者と先発企業何れも同条件でライセンス許諾
  代替技術を自由に開発できる
(3)クロスライセンスによる製品保護
 電気・通信業界の主流

2.知的財産のリスクマネジメント
(1)先行事例、技術動向調査(パテントマップの作成・検討)
(2)特許クリアランス調査(他社の特許侵害確認の調査)
(3)米国における事業参入リスク
 ①プロパテント政策による損害賠償額の高額化
 ②裁判におけるエンタイヤ・マーケット・バリュー・ルール
 (部品の特許であっても製品全体価格を損害賠償の算定基準とする)
 ③被告の故意侵害認定による三倍賠償制度
 ④個人発明家、特許管理会社の台頭(クロスライセンス交渉不可)
 ⑤多額の弁護士費用
(4)著作権侵害リスク
 ①保護期間著作者の死後50年間(米国は98年以降個人70年、企業95年)
 ②ソフトウェアプログラムは著作権で保護(明確にしたい場合、SOFTICに登録)

3.職務発明のマネジメント
(1)職務発明制度
・H16に特許法35条が改正され、保証金について見直し(青色LED訴訟がきっかけ/S34以降約80年振りの見直し)
 ①職務発明以外に従業者がなした発明は、使用者が予約承継(あらかじめ特許権を取得)できない
 ②雇用関係が終了した場合の過去の職務は職務発明に含まれない
 ③従業者は使用者に対して職務発明に対する対価を請求できる
 ④適用されるのは2005年以降の権利が対象
・対価額の算定基準は法律では不明確であり、過去の判例参考でしか対応できない
 ①発明貢献度の根拠不明確
 ②労使間の事前合意の定義不明
職務発明補償金制度(現状は内容に拠らず一定額の支給が8割であり、補償金の効果が得られていない)
(2)海外の実態
IBM(補償金は高額、優秀者には表彰)
・3M(補償金制度なし、名誉のみの表彰制度)

4.知的財産の価値評価と情報開示
(1)知的価値の重要性
 日本の企業価値の70%以上が無形資産(ブランド、ノウハウ、特許等)であり、実態把握、評価基準の確立は今後必須
(2)無形資産の会計上の取扱い
・無形資産を「のれん」の有無で区別(米国会計基準
「のれん」とは、知的資産の総体要素(企業の名声、立地条件、経営手腕、製造秘訣など)
・自己創設資産
 国際/米国/日本会計基準では認めていない(英国会計基準のみ「容易に確定できる市場価値」のみ認可)
・米国会計基準の概要(日本企業でも米国市場で株式上場している企業は影響有り)
 ①用途限定で他に転用できないものは研究開発費(期間費用扱い)
 ②転用可能な技術で1年以上の耐用年数がある場合のみ資産として計上
・日本の会計基準の概要
 ①定義、要件ともに規定したものなし
 ②ほとんど期間費用扱い(米国と同じ)
(3)知的財産価値評価について
・評価方法
 ①マーケットアプローチ
  株価や事業の取引価格など市場が価値を決定
 ②コストアプローチ
  特許取得コストや特許と同等資産を取得するために必要なコストを評価
 ③経験則アプローチ
  専門家の経験則で評価(利益三分法、25%ルールなど)
 ④インカムアプローチ
  事業全体の経済的価値評価額から知的財産分を抽出(事業収益能力から算定)
(4)知的財産の開示について
 ①企業戦略情報までは開示できない
 ②IR(投資家への情報開示)はテーマとストーリー性が必要
 ③第三者の事前開示は不可能
 ④米国は対応後退気味(開示内容について経営責任問われるリスク高いため)
 ⑤2004年10月現在、日立含め17社が「知的財産報告書」開示
 (ただし、売上拡大施策のみであり、利益確保につながるノウハウは開示せず)

5.産学連携と知的財産
(1)知的財産権の移転
・2004.4国立大学の独立法人化に伴い、知的財産権が発明者個人からTLO(Technology Licensing Organization:技術移転機関)へ移転
 (TLOが企業にライセンスし、収益は大学や発明者に還元する仕組み)
・産学連携では「広くて強い」基本特許を生み出すことが必要
 (基本特許を輸入し、改良特許を創出する戦後のモデルから脱却必要)