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なぜマネジメントが壁に突き当たるのか 田坂広志(東洋経済新報社)

1.なぜマネジメントには「沈黙は金」の瞬間があるのか?
(1)マネジメントには言葉で表現できないノウハウ(暗黙知:tacit knowing)が存在するため

2.なぜ「論理的」な人間が社内を説得できないのか?
(1)論理=単純化である限り、それに伴い見失う「大切な何か」があるため
(2)「大切な何か」は分析では得られず、全体を把握する直観力、洞察力でのみ理解できる

3.なぜマネジメントにおける「直観力」が身につかないのか?
(1)直観力は右脳強化、アルファ波トレーニング、禅といった感覚、感性を磨くことでは身につかない 
(2)その対極(論理思考)に徹することが獲得への近道
(3)直観力だけでなく洞察力、大局観、創造力も同様に「目的」として得ようとしても得られない
 究極まで考え続けた「結果」として自然に得られる(集中力が直感に繋がる)

4.なぜ「原因究明」によって問題を解決できないのか?
(1)複雑系の特徴(ひとたび起こったことが、ますます起こりやすくなる仕組みを持つシステム)
①循環構造(フィードバック・ループ)を持つ
②自己加速性(ポジティブ・フィードバック)を示す
③摂動敏感性(わずかな変化が大きな変動を生み出す)
(2)東洋的治癒の発想
①全体観察
②構造理解
③要所加療
④全体治癒
(3)西洋的治療の発想
①問題分析
②原因究明
③原因除去
④問題解決
・「要所」=「原因」とはならない所がポイント
・要所は構造理解(大局観)により浮かび上がって見えてくるもの

5.なぜ「矛盾」を安易に解決してはならないのか?
(1)論理的思考だと物事を単純化し、問題の「割り切り」をしてしまう
 (「矛盾」をかかえたままだと精神的ストレスがたまるため、楽になりたい誘惑に負けてしまう)
(2)マネージャは「割り切り」でなく「腹決め」をすること

6.なぜ「多数」が賛成する案が成功を保証しないのか?
(1)将来予測する場合、「多数」による多数決の意思決定よりも「直観力」のすぐれた個人の決断が良いことが多い
(2)市場は「創発性(emergence)」「自己組織性(self organization)」という性質から、
 「明日は何が起こるかわからない」「思うように動かそうとしても、動かない」
(3)これからマネージャに求められる資質
①勘が鋭い(未来予測でなく未来創造型)
②腹がすわっている(結果責任
③説得力(言葉に信念がある)

7.なぜ成功するマネジメントは「完璧主義」に見えるのか?
(1)「複雑系」の摂動敏感性(わずかな変化が大きな変動を生み出す)を体得しているがゆえに、
優れたマネージャは「細部」にこだわりが生じる
(2)こだわるべき「細部」とこだわる必要のない「細部」の判断は直感、大局観による
(3)「細かい」のでなく「細やか」である事が必要
メンバの力量や性格に応じて「機」を見た(=細やかな)アドバイスが必要

8.なぜ「成功者」を模倣することができないのか?
(1)成功の原因は単純化できない(人それぞれ異なる)
(2)「成功」の方法や法則は結果であり、原因ではない
(3)自分の個性と能力にあったバランス(全体性)をつかみとるには「体験」の方法を数多く知ることが必要

9.なぜ「経験」だけでは仕事に熟達できないのか?
(1)「経験」でなく「体験」(問題意識を持って経験する)が必要
(2)「体験」するには基礎体力(集中力)が必要

10.なぜ「ベストチーム」が必ずしも成功しないのか?
「ベストチーム」(成績優秀なメンバのみ)だけでなく、プロジェクトメンバの「性格」「相性」の考慮も必要

11.なぜ「動かそう」とすると部下は動かないのか?
(1)「計算」がはたらくと部下は動かない(操作主義)
(2)「無条件」に部下に共感して、意見を「聞き届ける」(真正面から全て受け入れる)ことが必要

12.なぜ「教育」しても部下が成長しないのか?
(1)マネージャが部下に伝えるべきこと
①「成長の方法」(こころの姿勢)を伝えること
②「成長の目標」(最高に目標)を持たせること
③「成長の場」(マネージャ自身が成長し続けること)を創ること

13.なぜ「優秀な上司」の下で部下が育たないのか?
・以下の3つの理由
(1)仕事が優秀=教えるのが優秀とは限らない
(2)部下が「優秀な上司」に依存してしまう
(3)上司自身が部下の成長を望んでいない

14.なぜマネジメントは「アート」になっていくのか?
(1)暗黙知を伝達する3つの方法
①否定法
 矛盾を突きつけることにより伝達する
②隠喩法
 様々な解釈ができる物語で伝達する
③指示法
 単純に「体験」する方法のみ指示することで伝達する
(2)複雑系の7つの性質
①分析不可能性
②管理不能性
③情報敏感性
④摂動敏感性
⑤分割不可能性(一部だけを独立して変えることができない)
⑥法則無効性(法則そのものが将来変わってしまう)
⑦予測不能性
(2)複雑系の7つの知
①全体性の知(個別の分析でなく全体を洞察する)
創発性の知(設計・管理でなく自己組織化を促す)
③共鳴場の知(情報共有でなく情報共鳴を生み出す)
④共鳴力の知(組織の総合力でなく個人の共鳴力を発揮する)
⑤共進化の知(部分治療でなく全体治癒を実現する)
⑥超進化の知(法則自体変えてもよい)
⑦一回性の知(未来は予測せず、創造する)