Smily Books Blog 2023年7月更新中

ゆっくり歩く人

#こんな事ここで書くのも変ですが、ご希望の人がいるので。。


 ゆっくり歩く人がいる。ノッシノッシというわけでもなく、そろ〜りそろ〜りというわけでもない。なので、迫力もなければ、優雅な感じももちろんない。
 あえて表現すればヌボ〜ヌボ〜という感じ、そう、朝起きてすぐトイレに行くときの何も考えてない感じの歩き方のそれである。いや、それともちょっと違う。そんな時でも人はもう少し早く歩くものだ。まるで天井からロープで引っ張られてるような、はたまたつり下げられて歩いてるような歩き方。ゆっくりだが地に足がつくようなドッシリした感じではないのだ。


 シャープな感じを意味する日本語の反対語にはいったいどんな表現があるだろう。鈍い鈍感ぐずのろま、そんな形容が近いのかもしれない。とにかく彼は全体に、均一に、一様に、何をするにもスローモーなのである。
(作者談:これは普通の人はムズかしいよ。なにせテンポ40でリズムキープって感じですから。僕にはとうてい無理だね。)
まぁ想像するに昔のろまなだった子供が、そのまま背だけ無節操にビヨーンと伸びて年だけ取っちゃうとあんな感じになるのだろう。


 そういえば昔ジャイアント馬場というプロレスラーがいたが、そんな感じに近いかもしれない。いや、彼は読書家だったから、ちょっと違うか。いや、もしかして意外とそこも似てる?


 「デクノボウ」

 この言葉の意味をよく知らないのだが、言葉の響きからしてピッタリかもしれない。

 ということでググってみた。


 http://www3.kcn.ne.jp/~jarry/jkou/ii088.html


 かな〜り強烈な意味だ。"役に立たない"、"人形のよう"、"なまけもの"、"自分からは何もしない"云々。たしかにそんな感じだ。残念だが、ここにきてようやく結論が出た。


 彼はデクノボウである。


 年?そう、年はかなりとっているはずである。が、パッと見、年齢不詳である。よく考えるとちょっと不気味である。真っ白なヒゲを顔中生やせばサンタさんに見えない事もないだろう。知らない人にはモンゴル人と言って紹介しても通じるかもしれない。


 当然、彼は立ち上がるときもゆっくりだ。まるでロボットが一度自分でゼンマイを巻き直してから動き出すよう。全体にゆっくりなので、普通の人が真似すると余計疲れることだろう。ヘタをすると腰を痛めるかもしれない。要注意だ。あれだけゆっくり歩くのは、もしかしたら、これが意外と健康的な歩き方なのかもしれない。「スローウォーキングであなたも健康に」これで一発ベストセラー狙えるかも。


 そういえば姿勢が妙に良い。歩いてるときもそうだが、座っているときもそうだ。ただでさえ背が高い上に、座ってる時もわざわざ背を伸ばしてるから、尋常でなく座高が高くなる。周りの「普通の人」たちより頭一つ、いや肩ふたつ分くらい?ニョキっと出てる感じ。そんな事は当人は全く気にしていないのだろう。周りから見ると座っている時でさえ、そびえ立つかのように人より図抜けて頭が飛び出ているというのに。頭自体、人より大きいのかもしれない。隣の人の倍。。いやそれは流石に錯覚か。
 座ってる姿勢が変に良いのも困り者である。妙な圧迫感を周りに与えている。


 きれいな芝生のある庭に松の木が一本だけ立っている。その木はきれいに手入れはしてあるが、なぜか周りの景色と合わず、まるで不釣り合い。まぁそんな感じだろうか。。。


 姿勢自体は良いのだ。それは間違いない。ただし、クドいようだがキリッとしたシャープさは全くない。つまりは、ただヌボ〜っと座っているのである。つまりは妙な迫力と圧迫感がある。


 水を飲むのもやっぱりゆっくりだ。


 小さなペットボトルで買ってきたミネラルウォーターをわざわざコップに注ぎ、チビリチビリと飲む。まるでおちょこで日本酒でも飲むように。
お酒が強いくせにゆっくり味わうように飲む人、そう、そういうタイプだ。
「っていうか、それ水だよ、あんた!」って突っ込みたくなる。


 抜けてる感じが人を妙にイライラさせるぜって感じ。毎朝通勤ラッシュの時でもやっぱりヌボ〜と歩いてるんだろか?ある意味それって度胸あるぜ!って感じだ。