「決められない」人の意思決定トレーニング 加藤 昭吉(日経BP社)
1.リスク(risk)の語源
「その日の糧を探す」(アラビア語)
「勇気を持って試みる」(イタリア語)に由来
2.時間のとらえ方
(1)日本人
未来に向かって無限に続く"残った"時間
目的を決めて"する"よりも結果として"成る"を善しとする生き方
(2)欧米人
"終わり"のある未来から逆算する"残した"時間
(3)イスラム人
一瞬一瞬(アラーの神によって)創られる時間(動の思想)
3.意思決定の仕方
(1)日本人は感情を優先して考える
情緒や季節感のような心情的・没論理的な世界を大切にするため、論理的・客観的に考える前に無意識のうちに感情を込めて考える習性がある
(2)変化に対するとらえ方(優先順位)
①アメリカ人「変わった事がないと不安」(「HAPPY」のHAPは「HAPPENING」が語源)
②日本人「お変わりありませんか?」の挨拶通り、変わらない事を善し(優先)とする
4.状況の的確な事実認識を日頃から確保する方法
(1)知っている事が本当に知っている事なのか疑ってみる(以下のどのゾーン情報なのか区別しておく)
①Aゾーン:体験、五感で確かめられる
②Bゾーン:メディア、口コミ
③Cゾーン:A,Bからの想像
→B,Cゾーン情報は自分の言葉で情報の意味づけをしておくこと(鵜呑みにしておかない)
(2)「見の目」より「観の目」の利く脳をつくる
①「見の目」:論理的に「見る」(理解する)とは、過去の記憶を手がかりにして"偏見"することにほかならない
②「観の目」:「論理記憶情報」(言葉を通して記憶される情報)でなく「周辺記憶情報」(心地良さなどの知覚やイメージ力)によるマクロなものの見方/考え方
(3)異質な情報でも入ってくる窓を広げておく
5.代替案検索の有効な方法
(1)何でもない何かに気づき、考え方の前提を変えてみる
→例.アダム・スミス「国富論」(個人が社会利益よりも自分の利益を追求した方が、結果として社会利益は効率的に増大する)
(2)組み合わせを上手に活かす
→過去の記憶をたぐり寄せ、関連づけの組み合わせを常に行うこと
(3)最終意思決定前の評価ポイント
①プラスは常にマイナスとともにあることを忘れない
②不確実情報を必要以上にマイナス評価しない
6.不確かさと上手に付き合う知恵
(1)初期段階で変化の兆候を捉える
人は理解できない事や嫌な事は無視してしまいがちであることに気をつける
(2)リスクの分散・分割を考える
(3)工夫をこらして「備え」を固める
(4)リスクの許容範囲をはっきりさせる
(5)「実験」に類似した先行事例に着目する
(6)偶然の流れの中に何か一種の順序(運)がある(黒が3回連続で出たからといって次が必ず白である保証はない)
→普段から潮の流れや勢い(運)には関心を持つこと
→ただし、上げ運/下げ運どちらも長い間続く事はないと心得ること
7.確率的勘について
(1)主観確率
客観的にはサイコロが1/6であることは知っているが、多数回の試行や観察ができない状況では、主観的に判断せざるを得ない
→多数回繰り返せば確実に100万円儲かるとわかっていても、そこまで到達するまでの資金がないと断念せざるを得ない
(2)不確かな事でもやってみる値打ちがある確率のロアーリミットは1/3近辺
→成功するかしないかが1対2くらいの割合ならやってみる価値はある
(3)確率50%近辺の対処の仕方
①どちらに決めても大差ないなら何れかに即決
②大局観を用い、50から70%に引き上げられれば決断、見通しが立たなければ見送り