人が育つ会社をつくる―キャリア創造のマネジメント 高橋 俊介(日本経済新聞社)
1.現在(バブル以降の世代)の若者たちの焦りと思い込み
(1)企業への不信感、不安感(自分しか頼るものがない)
(2)つながっていることの安心と負担(孤立、いじめへの恐怖)
(3)自分が求める功利的キャリアに結びつく仕事しかやらない傾向が露骨
(4)成長予感のある会社かどうか3年以内に判定し、会社に求めるものがないと社外でも通用するスキル習得に奔走
(5)功利的キャリアにすがりつくしかない若者は会社との利益相反が高まり、双方にとって不幸な状態
2.IT化とグローバル化
(1)ネットやメールによる履き違えたオープンコミュニケーション
①一見、異質な人や文化との交流が活発に見えるが、実態は同じ感覚の人同士で閉じたネットワークを作っているだけ
②同質的な閉じたネットワークは日本と中国が顕著で、逆に欧米では異質かつ開放的ネットワークが構築されている
→リアルコミュニケーションが不足すると、人を「信頼」する能力が欠如する
3.自らがキャリアを切り開いていく力をつける
(1)この職業に就きたいという明確な職種名でのキャリアゴールを決め、そこから逆算して目的合理的に行動するのは誤り
①早いうちに専門性をつけなければ負け組になってしまうという思い込みから狭く脆弱な専門職キャリアしか身につかない
②若いうちから会社を利用してジョブローテーションし、長期的ビジョンで専門キャリアを磨くこと
③真のプロフェッショナルはチームで働き、部下の育成にもコミットすることが求められる
④人に教えることが自分自身への成長に返還される
(2)ハプンスタンスアプローチ(長期的キャリアの80%は偶然に左右される)(クランボルツ教授)
①自律したキャリアアプローチをしている人には、充実した自分らしいキャリア形成に繋がるきっかけが次から次へと起こる
②様々なきっかけに対する気づきとその後の行動の仕方により、その後プラスにもマイナスにも作用する
③今の自分には無駄と思われる(現在の自分には理解できない)行動が長期的キャリアにはプラスに作用することがある
(3)健全なキャリア自律概念
①内的キャリア評価を重視
昇給、昇格という外的キャリアでなく動機、価値観といった内的キャリアを重視する
②キャリアコンピタンシー重視
ジョブマッチング(職種の特性やイメージ)より、日々の仕事のプロセスを重視
③日頃から布石を打つ
最終目標からの逆算でなく、日頃の仕事への取り組みからチャンスへの布石を打っておく
④常に最適、最高の働き方を求めるのでなく、長期的なフェーズ感覚で考える
ワークとライフのバランス、充電と放電、キャリアの拡大と深堀りなど、自分が今どのフェーズにあるかを長期的な視野で捉えること
(4)よいキャリアの条件
ポイントは、「動機、価値観、日々の思考・行動特性、スキルなどの能力の中に変わるものと変わらないものがあるということ」を正しく認識しておくこと
①日々の仕事で動機を活用
②自身の仕事の意味づけ
③中長期的成長実感
④人生全体の充実とバランス
(5)キャリアビジョンの捉え方
キャリア目標を固定的に考えるのでなく、動機や価値観の棚卸し、内省を定期的に柔軟に行うこと
(6)キャリアの切り開き方
①社会関係資本の棚卸し
自分の持っている人脈、ネットワークが同質的、かつ閉じた状況であれば、多様性、開放性のある構築を意識する
②トレンド分析
自分が身を置く業界や職種のトレンドを分析する
人脈の中でトレンド感を持つ人の思考・行動特性を理解する
③短期アクションプランと検証