Smily Books Blog 2023年7月更新中

Mind Hacks Tom Stafford(オライリー・ジャパン)

1.脳の構造
(1)人間とエレベータの違い
 ?エレベータを待っていて急いでいるとき、つい強くボタンを押してしまう(しかしエレベータの速度は一定)
 ?人間は刺激が強くなるとその分反応速度が早くなる
  (あるいは、掛け声に合わせてジャンプするとき、掛け声が大きくなると、高くジャンプしてしまう)
 ??の場合、ある一定レベルを超えるとそれ以上は反応速度は速くならない(ピエロンの法則)

2.視覚
(1)サッケード
 ?人間の目は中心部以外は解像度が低く、また盲点もあるため、自動的に高速
で動くこと(サッケード)で現実世界の「標本(サンプル)」を多く集めて補正している
 ?無意識に最高で1秒間に5回行われ、その間の脳への視覚信号は停止するため、サッケードしているという感覚は持てない(また、意識的にも止められない)
 ?1/10秒ほど1日に何十万回と繰り返される
(2)ギャップ効果(視線の固定)
 ?何かをじっと見ていてから、別のものに視点を移すには少し時間がかかる(ロックされた状態)
 ?ただし、見ている対象そのものが目の前からなくなってしまった場合は、視点を早く移す事ができる(ロックが外れた状態)
(3)プルフリッヒ効果
 左右の目に入る光量の差が大きいと、直線運動をしている振り子が楕円運動に見える
 ?光量の差により速度の認知に誤りが生じるため
 ?暗い画像処理は時間がかかる(信号の伝達が遅い)ため、サングラスなどで暗くした目には、もう一方の目よりも遅れて画像が届く
(4)順応
 ニューロンの疲労により順応は起きる
(5)足踏み錯覚
 ?運動に関する情報(巨細胞性)は色や形(小細胞性)とは別経路であり、かつ優先処理される
 ?運動に関する情報は明るさのコントラストを手がかりに視覚で捉えられる
 ?白黒ストライプの上で物体を運動させると足踏みしているように見える(暗い場所だと運動が止まって見えてしまうため)
(6)固視微動
 視点がどこかに固定されているときでも、目は細かな揺れが起きている
 ?目のニューロンを常に反応させておくため
 ?蛇の回転
  http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/index-e.html
(7)前庭動眼反射
 ?内耳から頭の動きとは反対方向に目を動かす信号が送られる
 ?頭を多少左右に振っても本は読む事が出来るが、同程度に本を左右に振るとまったく読めなくなる
(8)役立つノイズ
 ニューロン間でやり取りされる信号にはノイズが多いが、有効に利用されている
 ?ニューロン活動全体の平均を取ることで、通常はノイズの影響は抑制している
 ?適切なレベルのノイズを用いると情報がより鮮明かつ検出可能レベルを大きくする(確率共鳴)ことができる

3.注意
(1)サビタイジング
 ?脳は物の数は4つまでなら一瞬で把握することができる(1つあたり40〜80ミリ秒)
  (ただし、物から物へ視点を移す必要のない配置であることが前提)
 ?5つ以上だと、とたんに遅くなる(1つあたり250〜350ミリ秒)
(2)復帰抑制
 脳には、直前まで注意を向けていたものに再度注意を向けることを抑制する機能がある
(3)注意の瞬き
 何かを認識すると、約0.5秒間、他の事を認識できなくなる
 →何かに注意を向け、それを脳内資源を使って認識するのに0.5秒かかるため、その間に他の情報が入ってきても無視されてしまう
(4)負のプライミング
 特定の感覚刺激がいったん無意味なものと認識すると、それ以降、脳が反応を抑制してしまう

4.聴覚と言語
(1)「タイミング」に敏感な聴覚
 ?視覚(1秒間に24コマで騙される)よりも聴覚は鋭敏(1秒間に24クリック音がなっても連続しては聴こえない)
 ?のタイミングを伝達するニューロンは最高で500回/秒であり、他のどのニューロンよりも速い
 ?音のすきまはわずか1ミリ秒の空白があれば検知可能(目に映ってから意識されるまでは30ミリ秒もかかる)
(2)ミッシングファンダメンタル
 ?存在しないはずの基本周波数の音が聴こえる
  http://physics.mtsu.edu/~wmr/julianna.html
 ?音程が果てしなく上がっていくように聴こえる
  http://www.design.kyushu-u.ac.jp/~ynhome/JPN/Demo/index.html
(3)ランダムパターンからの聴き取り
 http://www.mindhacks.com/book/48/whitechristmas.mp3
 (ホワイト・クリスマスが聴こえるかどうか)
(4)言語の理解
 人は最高で1秒間に50音素まで言葉を理解できる(通常話すスピードよりはるかに速い)

5.感覚どうしの関係
(1)ストループ効果
 言葉を話す時に文字を見ると注意がそらされるが、「非言語」作業している時に文字を見ても注意はそらされない
(2)サイモン効果
 左側に見えたものは左手で反応しやすく、右側で見えたものは右手で反応しやすい
(3)マガーク効果(目で聴く)
 人の唇の動きを見ながら聴くと、声だけを聴いている時とは変わる場合がある(目で見たものが影響を及ぼす)

6.運動
(1)アフォーダンス
 物体には「それに対して何をすればよいか」という情報が内包(afford)されている
 (例.「カップに入ったコーヒー」は、「持ち上げて飲むこと」がaffordされている)

7.構造を知る
(1)ゲシュタルト原理
 脳は、周囲の物事(時間、空間的つながり)を「ひとまとめ」(意味のあるもの)にしようとする
(2)「自分の意志」の認知
 ?指を動かすと決定した真のタイミングより、本人が記憶したタイミングは遅い(約400m秒程度)
 ?「自分の意志」と感じている行動より、実は意識の外にある「何か」の方が大きく行動に影響している
 ?思考と出来事の間に「つながり」を見出した時、自分の意志があると感じる
  (逆に何の「つながり」も見出せないと自分の意志ではないと判断する)

8.記憶
(1)プライミング
 ?最近見たばかりのもの(単語や音など)やそれと関連の深いものは、他のものより思い出しやすい
 ?触れたこと自体忘れていても(潜在記憶)、プライミングは起きる
(2)記憶の出所(原因)
 ?記憶された出来事の詳細は覚えていても、その原因(なぜ起きたか)との結びつきは切れてしまうことがある
 ?幻想(想像しただけ)と事実(実際に行った)の記憶については、区別する監視システムがはたらくため、通常は混同することはない
(3)偽物の記憶
 ?人は覚えてもいないことを「思い出す」ことがある
 ?見覚えがあるという感覚は、「似ている」者同士の近隣の記憶が活性化されるため、ときたま情報の捏造(誤解)が生まれる
(4)文脈干渉効果
 「状況込み」で覚えてしまうと、状況が変わるとその中の特定部分だけを思い出すことができなくなる