インターネット社会の10年 小豆川 裕子(中央経済社)
1.「インターネット社会」をどう読み解くか
この10年のICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の普及・進展の特徴
(1)コモディティ化した情報機器と多メディアとの融合
(2)エンドユーザ起点のビジネスモデルの創造
(3)国家戦略としてのICT
(4)ICTの登場で揺らぐ社会規範、安全神話の崩壊
(5)経済再生の起爆剤として期待されるICT
2.インターネット社会はどこへ
(1)10年間の変化が意味していること
①「個」のクローズアップ
・「モノ」「コト」「ヒト」など様々な面で個別化現象が起きている
・ピラミッド型組織からフラット型、ネットワーク型組織へ
・商品、サービスのパーソナル化
②枠組みの変化と要素の組み換え
・供給者視点からユーザ視点への商習慣変化に伴う既存枠組みの再構築あるいは創造
③関係性の変容
・企業、ライフスタイルなど各要素間は基本的に対等で水平的な位置づけの下に相互に貢献し合う関係を築こうとする
・ワークスタイルデザイン(仕事場所、時間、方法・手続きなど)の自由化
・自分の仕事を個人生活や人生の中でどう位置づけるかが重要
・家族を一番大切にする割合は増加しているが、互いの行動については非束縛関係を選好する
・集団主義から個人主義、そして関係主義(人間関係自体にプライオリティをおく)的な家族志向に変貌
(2)社会のモジュール化
社会を独立かつ単純な小さい単位(モジュール)に分け、モジュール間のインターフェイスのみ標準化することで、全体を作り上げていく
①単位の組み換え、取替えが自由
②単位毎に同時進行で設計可能
→一つの大きなコミュニティから、たがいに関心が関連しない無数の小さなコミュニティの集合へ変容しつつある
(3)「木も森も見る」環境(例.「はてなダイアリー」のキーワードリンク)
「個」が個別に自由に活動しつつ全体も感じられる環境が必要
①これまでの全体から「個」を決めていくインテグラルな発想下よりも、全く異なるモチベーションが生まれる
②他者からの知的刺激が得られる環境(キーワードリンク)を用意する事で、自発的・自立的な行動を導き出すことができる
③自分の力が全体に与える影響が目にみえてわかることが、さらにモチベーションをあげる好循環を生み出す
④大規模データの可視化技術(データ間の類似性を2次元もしくは3次元表示)
⑤インタープリタ機能(単なる言葉の置き換えでなくコンテキストを踏まえた仲介機能)
⑥メディエイター機能(集中化した多様情報の検索誘導、「個」の表現、意思決定支援分析技術)
⑦ハブの役割となる「個」(小さなネットワークを束ね、他のネットワークへの橋渡しをする触媒)が活躍しやすい環境作り