仕事ができるプロジェクトマネージャー 野間 彰(日刊工業新聞社)
1.「できるPM」のノウハウでPmbokの穴を埋める
・ノウハウ=短い言葉
ノウハウ(短い言葉)は日々「気づき」が合った時にメモ(ライブラリ化)し、執着心を持って実践する
・ノウハウの伝え方
ノウハウのコンセプトに即した技術と明確に成果を上げるプロセス(4段階ロジック)を説明する
(1)「進捗管理では、常にその後必要となる施策を打つ」
「出来高管理」により、その後必要となる施策を常に考えておく
(2)「設計資産を徹底共有する計画を作る」
「プロジェクト計画」に共有がわかるように単純なバーチャートでなく、ネットワークチャートで示す
(3)「リスク特定は足で稼ぐ」
「リスク特定」は過去の類似PJ経験者に聞いたり、公開情報調査で対応する
(4)PJ最後の姿を詰めていく(要件追求技術)
「WBS」は標準WBSから対象PJ固有WBSへの変換方法として、PJ最後の姿を詰めていく事で対応する
①抽象的な目的から具体的なシステム仕様へ(「例えば?」という質問を有効に利用する)
②仮説で良いのでビジョンを想定する(ビジョンといえる所までユーザに質問追求する)
③ビジョンが曖昧なユーザには、類似/先行事例紹介により、システム側が誘導する
④ビジョンと課題を混同しない(ビジョンと現実とのギャップを課題として捉える)
(5)「誰も傷つかないで問題を解決する」
・プロジェクトメンバ全体が問題認識しているが、解決するのに誰かが痛みを伴うため、
誰も解決しようとしない状態が継続してしまう
・解決手順
①作業内容と終了判断が明確な計画を再作成
②計画の中に「遅れた時の対処方法」を盛り込み、関係者で合意形成
(作業優先順位を決め、顧客に納得してもらう)
③要件の見直しは時間を決めて実施
(6)「説得を設計する」
・顧客を説得する場合の手順
①事実をベースに説明
②(自分を)信頼し、安心できる態度と内容
③論理的にお願い事項を提言
(7)「段取りをつけて、顧客にやらせる」
①顧客の誰にどのような課題を解決してもらうか明確にする
②顧客トップ向け説明会を企画し、顧客プロジェクト責任者に発表してもらう(宣言させ、退路を断つ)
③顧客がやらなかった場合の不利益を事例で示し、フォーマルな会議で約束させ、議事録に残す
④顧客が課題対応している時、決して支援しない(②はアレンジまでは支援するが、発表自体は全て顧客側に任せる)
(8)「信頼関係を築いてから、顧客にやらせる」
①予定作業外であっても、問題を発見した場合には、その作業を優先する
②問題解決できない場合も代替案を示し、客先(キーマン)の立場を保つように
大きなクレームとならない形で処理する
③①、②により、信頼関係を築いた上で、
顧客側で実施すべき作業を納得してもらい、実施してもらう
(9)「些細な要求は、方針で切る」
①顧客の要求を断る事のできる明快な判断基準を示す事のできる方針を事前に知っておく
②①を知るためには顧客側の部門責任者にヒアリングするしかない(システム企画書から漏れている可能性が高い)
③具体的な業務イメージ、現在の状況(環境)、開発・運用基本方針の3つを確認しておく
④方針は変化する場合もあるため、コミュニケーション
(10)「(顧客も含め)本当の役割分担をする」
①コンセプト維持者
企画〜実行段階で出てくるネガティブな意見や問題を解決する
②メンバの援護役
メンバ間の意思疎通、元気付け
③トップインタフェース役
トップの意思決定支援としての問題把握できる論点説明やトップ意見の的確な汲み取り
④リクルータ
今後必要な人員の明確化、適切な人員を引っ張ってくる
⑤方法論開発者
システム効果にういて先行して仮説検証を実行
⑥ユーザ革新リーダ
保守的なユーザの考えを変革、啓蒙(顧客側に配置)
⑦ユーザスペシャリスト
業務知識スペシャリスト(顧客側に配置)
⑧課題抽出者
各メンバ状況ヒアリングから課題抽出し、リーダに報告
⑨調査担当
先行事例、競合相手の動向調査、仮説検証実施
(11)「与えられた工期、工数以上の高生産性で計画する」
(12)「次期案件計画の仮説は現行システム開発初期から構築していく」
(13)「打ち合わせ中は、メンバの顔色が変わった瞬間を見逃さず、追求する」
・会議の席上では追求しても正しい回答は得られない場合があるため、アポなしで実際の現場を訪問し、現物で確認する
・正式な会議で言いにくい事は、1対1で確認する
2.ノウハウ体系化法:できるPMを作る技術とは
(1)ATACサイクル
・ノウハウを気づかせ、どのように対応させるかまでのサイクル
①Ah
日常の活動の中で「ピン」とくる
②Thought
「ピン」ときたら仮説を立て、一度頭の中で(どこに応用できるか)検証する
③Action
考えた事を実際にやってみる
④Conceptualization
実践結果を評価し、再利用可能な形に再整理する
(2)「PMノウハウ」をえぐり出すインタビュー技術
①「誤った名前」の確認
PM毎に名前の用い方が異なるため、「例えば・・」と具体例確認し、誤解しないようにする
②実践事例の追及
①で抽象的な再定義が繰り返される場合があるため、意味解釈できるレベルまで具体的な事例を上げてもらう
③②で解釈した内容をノウハウ(方法論としてのコンセプト)としてまとめ、インタビュー対象者に確認する
④③を実現させるための技術、プロセス、ツールを確認する
3.実際の育成:できるPMはこうして作る
・人材育成スピードを上げる
(1)コンセプト教育(OJT含む)の実施
①見識のあるコンサルタントの一言(短い言葉=ノウハウ)
②見識のあるコンサルタントの書籍
③「できるPM」を目の当たりにして体感(OJT)
(2)教える技術を強化
(3)退職or一線から去る「できるPM」のノウハウ継承が必要
ただし、業務ノウハウ以外のリーダシップ、交渉力等はドキュメント化不可能