ブランド・ストレッチ デビッド・テイラー(英治出版)
1.ブランド・ストレッチが失敗する理由
(1)ヴァージンの自己中心ストレッチに見られる問題点
・コア(航空とエンターテイメント)を大切にしない
・有名になった理由(誰もが称える大企業である航空と金融に挑戦した事)を忘れる
・消費者や市場を理解しない
・散発的なストレッチ(ブランド・プロミスできない分野への資源投入)
・実行(サービス)がおざなりになる
(2)ダブの三段階ストレッチ
①コア製品の拡張
②直接的ストレッチ(製品の本質的部分のストレッチ)
③間接的ストレッチ(ただし、一貫したマーケティングが必要)
2.コアを強化する
(1)コア製品の指標
①売上高(過去数年間、継続的に成長)
②ブランド・イメージ(消費者が選ぶ理由となっている特徴が明確)
(2)ブランド拡張時のリスク
①アイデアの横取り
アイデアをコア製品に付加(製品変更)することによるベネフィット低下
②カニバライゼーション(共食い)
他製品への利益侵食
③新しいおもちゃ症候群
次々に新製品、製品変更を行った結果、売り上げ、利益共に低下
3.ビジョンを構築する
(1)基本ブランドのポジショニング
・バック・トゥ・ザ・フューチャー(将来から初めて現実へ戻る)
・基本ブランド(=将来=あるべき姿)とし、現在の製品(=現実)開発計画を立てる
・市場は広めに捉える(ただし、自己中心でなく市場動向をよく捉える)
(2)ブランドの柔軟性
①製品ブランド(コカコーラ)
コア製品ラインの拡張に集中する
②スペシャリスト・ブランド(パンパース)
直接的ストレッチに集中する
③アンブレラ・ブランド(ダヴ、ヴァージン)
企業「傘下」に複数の業種があるため、間接的ストレッチに集中する
④ライフスタイル・ブランド(グッチ)
360度ストレッチ
4.ブランド・ストレッチの機会を見つける
(1)市場マップを作る
・六つの要素
6P:人(People)、購入目的(Purpose)、使用時期(Period)、場所(Place)、価格設定(Price)、製品(Product)
①人 新規顧客
②購入目的 新たなベネフィット
③使用時期 新たな機会
④場所 新たなチャネル
⑤価格 プレミアムをつける
(2)イノベーションへの近道
・理論は直線的(消費者理解→コンセプト→製品開発)だが、
現実は上記の繰り返し(イノベーション・ループ)
①他のカテゴリーをヒントにする
②社内から着想を得る
宝となる技術を探す、アイデアを拝借する
③競合の動きを参考にする
一番手になる、自社の強みを活かす
5.アイデアを絞り込む
(1)事業性とブランドの魅力度の二軸マトリクスで絞り込む
・魅力があるか(問題解決度、暮らし快適度、他との差別化、お買い得度、市場動向)
・信頼性があるか(機能面、感情面)
・既存製品を補完するか
・実行するだけのコンピタンスがあるか
(2)ブランド拡張バリエーション
・ライセンス供与
・共同ブランディング
6.ブランド・ストレッチを実現させる
(1)ブランド・プロミスを実行する
消費者が抱くブランドらしさを必ず実行、実現する
(2)差別化のポイント
①独自性(「ベルトーリ」のオリーブオイルのマーガリン)
②そこまでやるのかと思わせる(「ジレット」の何億ドルの基本開発費)
③ひねりを利かせる(「テトリー」の丸型ティーバッグ)
7.ブランド・アーキテクチャを持つ
(1)ブランド・アーキテクチャとは
①消費者支援
製品選択のサポート(適切な製品を簡単に購入できるように)
コンセプトの通知(ブランド概念を適切に理解してもらう)
②組織支援
ネーミングとアイデンティティ(色、ロゴ、視覚イメージなど)の一貫性
ROI(投資収益率)の向上(適切な製品に適切な資源配分)
コミュニケーション戦略(基本ブランドと拡張製品のバランスのよい伝え方)
・ブランドのエピソード
・ブランドのバックボーン
・ブランド資産
・ファミリー感
・スタンドアローン
(2)単一プラットフォームのブランド(製品、スペシャリスト)
①バージョンで整理する
②フォーマットで整理する(例:粉末、タブレット、液体)
(3)複数プラットフォームのブランド(アンブレラ、ライフスタイル)
①プラットフォームの数を決める
②基本ブランドと拡張ブランドの違いを確認する
③ブランド・アイデンティティを検討する
④プラットフォーム毎に製品ラインを設計する
⑤事業性とブランド・ビジョンへの貢献度を考える
⑥今後の展開を考える