Smily Books Blog 2023年7月更新中

MBAクリティカル・シンキング グロービス・マネジメント・インスティテュート(ダイヤモンド社)

1.論理展開の基礎
(1)思考の落とし穴
・演繹法での落とし穴
①間違った情報
 個人的意見、信頼性の低い資料など。観察事項そのものが誤った情報となる場合
②隠れた前提
 一般ルール自体あるいはその適用方法が間違っている(ルールとケースのミスマッチ)場合
 演繹法(観察事項から一般ルールを用いて結論を導く)にて一般ルールが言及されず、それ自体誤解された形で適用される
③論理の飛躍
 観察事項、一般ルール共に正しいが、結論づけるための最後の論理展開が誤っている場合
 起こる可能性の低い観察事項を組み合わせて結論づける場合もあり。
(間違った観察事項はいくら足しても良い結論にならない→0はいくら足しても1にはならない)
帰納法での落とし穴
①軽率な一般化
 いわゆるステレオタイプ。個人的な偏見により少ない観察事項のみで誤った一般化をして結論づける場合
②不適切なサンプリング
 選び出したサンプル自体あるいは選び出す条件そのものに誤りがある場合
(2)(ビジネスパーソンに多い)論理展開の癖
①言い切れない
 論理構成は問題ないが、結論が導き出されていない
 単に事実に基づく情報を羅列しているだけ
②一足飛び
 思いつきの範囲でしか解決策を考えない
 他の視点で考える意欲がない
 第三者から見ると論理の飛躍がすぐ見つかる
③あきらめが早い
 論理展開が複雑になると検証する気がなくなり、あるレベルで妥協してしまう
 本質的な根拠の省略や論理の飛躍となり、結論が曖昧となる

2.因果関係を見極める
(1)因果関係のパターン
①単純な因果関係
 1つの原因に対して1つの結果があるだけの因果関係
②にわとり−たまごの因果関係
 原因が結果を生み、その結果がまた最初の原因となる
 相互に原因と結果の関係となっている
 構成要素は2つ(原因1、結果1)とは限らない。3つ以上の要素で構成される場合もあり
・好循環
 にわとり−たまごの因果関係が良い循環でまわること
・悪循環
 にわとり−たまごの因果関係が悪い循環でまわること
 どちらも一旦回り始めると加速しやすく止めにくいため、回り始める最初が肝心となる
③複雑な因果関係
 ①、②のミックス
(2)因果関係の必要条件
①時間的順序性
 原因ら結果の因果関係は原因が結果より必ず時間的に先に起きている
②相関関係
 1つが変化すると同じように他方も変化すること
 XとYに相関関係があってもXからY、YからXと因果関係があるとは限らない
③第3因子がないこと
 原因、結果の両方に共通する因子がないこと
 原因結果それぞれに因果関係のある因子がないこと
(3)思考の落とし穴
・演繹法での落とし穴
①直感で判断する
 時間、コストの関係で詳細な調査、観察ができず、直感により軽率な判断がされる場合
②第3因子の見落し
 A、B共通に作用する第3因子に気づかないまま、AとBに因果関係があると判断する場合
③因果(関係)自体の取り違い
 原因と結果の見誤り、あるいはにわとり−たまごを単純な因果関係と錯覚する場合
④最後の藁(Last Straw)
 たまたま最後に起こった事柄を、本質的な原因と勘違いする場合
(4)手段と目的の注意点
 原因と結果が過去の事柄であるのに対し、手段と目的は未来
①真の目的を最初に明確化する
②手段が目的化していないか(常に)確認する
③手段による副作用(目的に対する悪影響)が出ていないか確認する
④どの手段が改善効果が高いか検討する
⑤どの手段が効率よく目的達成するか(ドミノ倒し的、二度手間を省く、レバレッジが効く)を検討する

3.構造的アプローチ
(1)構造化とは
 表層的に目につく要素、背景に存在する要素・メカニズムが漠然としている所から
①まず全体像を見極める
 全体から重要なポイントを抜き出し、重要性を比較検討すること
②各要素間の関係をわかりやすく整理する
→問題解決あるいはコミュニケーションの局面で用いる
(2)事象の構造化パターン
①全体としての事象間の関係性(一時点でとらえた関係性)
②因果のメカニズム
③個別要素の重要度
→③を意識しながら①、②を明らかにしていくアプローチが一般的
(3)事象の構造化ステップ
①ファクト・ファインディング
 事実を収集・観察する
②基礎分析
・①で収集された情報を元に仮説検証する
・なるべく多くの有効な分析の切り口で検討する
③仮説としての事象の構造化
・本質の結晶化:事実や分析結果をグルーピングし、そこから結局何が言えるかを問いかける
・本質の再確認:得られた本質に対して、なぜそのような事が言えるのか問いかけ、もとの事実や分析結果が材料となっていることを確認→結晶化のコツは、枝葉末節は削り、全体の構造・メカニズムを浮き彫りとすること
④仮説検証のためのリサーチ・分析と構造化

※ステップをマスターする事より、構造化思考する癖を持つこと自体がはるかに重要
※①から③と単純に流すのではなく、循環して進める方が効率がよい。

(4)構造的に考えるコツ
・考える前に
①そもそもなぜ、そのことについて考えたか問い直す
②まず目的ありき/メリハリを意識する
 何でもフレームワーク(=一つの切り口)に当てはめるのでなく、それが目的に適しているかをまず考える
・思考を偏らせないために
スキーマ(枠にはまった考え)や常識にとらわれない
④第三者の視点を入れる
 複数で考えても第三者の視点がはいらない場合があるので注意
 (例.スキル、経験が似通っている者同士の会議、社内力学的な問題から(第三者的)発言を控えてしまう)
 (文章化したものを)後日読み直し、自分自身が第三者の視点で見つめること
・クリアに考えるために
⑤言葉の定義を明確にする
 キーワードの意味、定義が曖昧だと何か気の利いたことを言っているようで、
 実は何も語っていない(思考停止ワード)ことになる
 (例.再構築する、検討する、リスク)
 →キーワードでなくフルセンテンス(S+V)を明確にして考える癖をつける
⑥事実を峻別する
⑦イメージで考える
⑧適切な比較対象(ベンチマーク)を持つ
⑨文章やチャートにしてチェックする
・スピーディに考えるために
⑩一度にたくさんのことは考えない

(5)問題解決のステップ
①イシュー特定(課題発見)
 現状とあるべき姿を比較し、課題を発見する
②問題点特定
 ①の中で最も重要な項目を特定
③原因分析
④解決策立案

(6)MECEの切り口の考え方
①足し算型(年齢/地域別など)
②変数型(利益=売上−コストなど)
③プロセス型(原材料/仕掛品/完成品など)

(7)伝える技術(論理のピラミッド構造化)
・思考時のステップ
①イシューの特定(受け手の関心事や目的)
②情報のグルーピング
 イシューへの回答となる情報を洗い出し、枠組みを決めてグルーピング
③メッセージ抽出
 帰納・演繹的なアプローチで結論となるメッセージを抽出
④全体チェック<Why? True?>
 上位・下位の構造を上→下/下→上と問い直す(AだからBである、BであるのはAのためである)
 最終的な抽出メッセージ(メインメッセージ)がイシューに答えているかどうかもチェック
・表現(文章作成)時のステップ
①イシューに対する回答(メインメッセージ)の記述
②①の裏づけとなるキーメッセージを複数提示
③②を説明、例示する複数の情報を提示
 →箇条書きでなく、接続詞、助詞を用いて記述
 →情報の関係を明確にしておき、情報の意味について解釈の違いを生じにくくしておく