内部監査人室 阿久澤 榮夫(文芸社)
1.監査とは
(1)特定の目的のために
①内部監査
組織体の行為(組織活動)の法令/組織内規則遵守と適正かつ効率的に実施されているか
②会計士監査
法令(商法特例法や証券取引法など)強制監査で、財務諸表が法令/会計基準に則っているか
③監査役監査
法令(商法特例法や証券取引法など)強制監査で、取締役が法令/株主総会議決に則って遂行されているか
(2)独立した立場で
①内部監査
組織体内の監査専門担当者(監査業務のアウトソーシングで外部が行う場合もある)
②会計士監査
公認会計士の資格を有し、組織体と利害関係のない者
③監査役監査
株主総会で株主代行者として選任された監査役
(3)行為の実際(実態)を把握、分析し、意見を表明する
①内部監査
組織体内の「業務」の把握、分析と意見表明
②会計士監査
組織体内の「会計」の把握、分析と意見表明
③監査役監査
組織体内の「会計と業務」の把握、分析と意見表明
(4)仮説の証明もしくは否定するために必要な事項
①経験蓄積
仮説作成の基礎となるノウハウと仮説構築力
②人間洞察
人間の行動様式の把握と検証力
(5)再発防止のための知見を得ることが目的
不具合を指摘すること自体が最終目的でない
(6)是正・改善されるまでが最終目的
意見表明しただけでは目的は達成されない
2.内部監査人
(1)意見表明
根拠(事実)+論拠(拠り所、判断基準)から監査結論(意見表明)を述べる
①客観性
監査対象から精神的・経済的に独立し、事実からの判断(根拠)と拠り所のある判断(論拠)をしていること
②公平性
全ての事例に同じ判断基準を使用すること
③忠実性
拠り所のある判断(論拠)が組織体内で適用され、その適用に妥当性がある
(2)権限
①資料の収集と閲覧
②関係者への質問
③現地(立ち入り)調査
④監査上必要な関係会議への参加と傍聴
(3)心得
①監査の本質は"見る"こと(事実からどのような仮説を構築するか)
②監査所見は事実で示し、事実と意見を明確に区分する
③ルールなきところに監査なし(判断の論拠)
④事実なきところに意見なし(判断の根拠)
⑤他人の判断を自己の判断としない
⑥素人の感覚で実態を見る(監査慣れしない)
⑦合理的・経済的な計画と効率的な監査の実施
⑧「監査リスク」(実施時の要員、時間などの制約や監査手続き不備により把握できない不具合が存在)はあるものだと自覚し、その回避に努める
⑨監査能力向上に日々努める
3.監査の事前準備(予備監査)
(1)業務知識、実態の調査と過去の内部監査結果の確認
(2)内部監査マニュアルの整備
(3)監査調書の準備
(4)判断基準の整備
4.監査リスク
(1)固有リスク
業務自体持っているリスク(現金盗難、つり銭間違いなど)
(2)統制リスク
内部牽制制度不備が存在するリスク(社内規則不備、漏れ、遵守されていないなど)
(3)監査リスク
内部監査で不具合を見逃すリスク
5.不具合・不適正の指摘ポイント
(1)正確性
処理の重複や漏れ
(2)合規性
法令・社内規則や業務運営方針違反
社内規則や業務運営方針自体が古く、実業務と乖離
(3)経済性
費用に関する処理が妥当かどうか(精算の時期や額など)
(4)効率性
目的達成(成果)にかかった費用が妥当かどうか(費用対効果)
6.意見交換会
(1)意義
①内部監査人の認識と判断補強
本監査(現地監査)で把握した不具合・不適正事例を非監査部門に示し、意見(反論・再説明)を得る
②内部監査人と非監査部門との認識の共有
是正・改善の実施と再発防止可能な仕組みを定着させるために、非監査部門自体が理解し納得してもらう
③関係部門への意見・要望聴取
(2)準備
①不具合・不適切事項の整理(重要度・発生頻度・影響度別)
②根拠(定量的な事実)と論拠(判断基準を拠り所にした指摘事項)
7.監査報告書の後処理
監査ノウハウの蓄積と伝承
(1)次回監査への参考
(2)内部監査人の能力向上
(3)内部監査活動の今後の効率化
(4)新規配属された内部監査人へのノウハウ伝承