商品開発マーケティング 浅田 和実(日本能率協会マネジメントセンター)
1.課題抽出
(1)既存商品の場合
①マーケティング活動の分析・総括
商品力4要素の製品力、コミュニケーション力(広告など)、流通力、販促力から総合的に分析
(売上が伸びない原因を製品力のせいに短絡しない)
②市場/顧客満足度調査
③ポジショニングチェック
自社/競合商品使用状況マトリクスで、以下4つのユーザに区分する
自社ロイヤルユーザ(自社ヘビー&競合ライト)
使い分けユーザ(自社ヘビー&競合ヘビー)
競合ロイヤルユーザ(自社ライト&競合ヘビー)
ノンカテゴリーユーザ(自社ライトー&競合ライト)
(2)新規商品の場合
2通りの参入アプローチ(小ヒット狙いで企業を安定成長させることを重視する場合は②を選択)
①市場環境重視
市場調査→自社経営資源棚卸しの順に課題抽出
②企業内環境(コアコンピタンス)重視
自社経営資源棚卸し→市場調査の順に課題抽出
2.コンシューマインサイト
消費者の定性情報(生活行動や意識など)から得られる課題解決方法
(1)収集方法
グループ/パーソナルインタビュー、観察、行動日記/エッセイなど
(2)洞察方法
KA法→KJ法の順で実施
(3)KA法
収集したテキスト情報を以下の3項目で1枚のカードにとりまとめ(テキスト100字から1〜3枚が目安)
①出来事
状況・動機・行動・結果の組み合わせで30文字程度ピックアップ
②キーワード
①が生き生きとイメージでき、ニュアンスが伝わるキーワード
③生活価値
背景に感じられる価値を想像/推察で良いので記入
(4)KJ法
(3)で作成したカードから出来事/生活価値別のマップを作成
3.商品コンセプト
以下の3要素で構成
(1)ベネフィット
生活が向上する効用・効果
(2)ターゲット
商品による変化を最も望む人
(3)シーン(シチュエーション)
商品による変化が起こる生活場面
4.コンセプトをカタチにするプロセス
(1)商品本体の開発
①試作品テスト(消費者テスト)
②評価基準
7段階評価(+3〜-3)の総合評価の加重平均値1.2を最低ライン(成功確率50%)、1.5(成功確率80%)を目指す
(2)コミュニケーション手段の開発
①ブランドマネジメント(浸透・定着した銘柄を守り、育てること)
・企業名/商品ファミリー名/個別商品名が3要素
→企業名+個別商品名(ニチレイアセロラ、ルックJTB)
商品カテゴリー/ファミリー統一(クノール、ソフィー名、植物物語、パナソニック)
個別商品名のみ(iPod、G-Shock)
主張、考え方のブランド化(無印良品、能率手帳)
企業名=ブランド名(TOTO、アディダス)
・ブランドイメージはSD(Semantic Differential)法で測定
→対となる名詞や形容詞と対極におき、5、7段階評価
②ネーミング(新しい商品名を検討すること)
・商標調査(特許電子図書館、BRANDYなど)は、ブラインド期間考慮
・出願されているが公開されていないブラインド期間(約2.5〜3.5ヶ月)明けに、再度最終調査する
・識別姓のない言葉(普通名称・慣用語・効能など)は商標登録できない(例.「からだにやさしい○○」)
→登録可能とするテクニック
デフォルメ(ウメッシュ)
読み方変更(XY:ゼクシー)
当て字(キャべ2)
5.販売戦略の立案ポイント
(1)商品力4要素による評価
①製品力
試作品満足度、希望小売価格
→試作品利用後の以下の4つ質問(価格付け)に対する分布曲線の交点から希望小売価格を絞り込む
・購入拒否(これ以上の価格では買わない)
・購入ためらい(高いが買っても良い)
・購入(買うのが妥当)
・品質不安(これ以上安いと品質が不安だ)
→上限価格(購入と購入拒否曲線の交点)、下限価格(品質不安と購入ためらい曲線の交点)、認識価格(購入と購入ためらい曲線の交点)
価格弾力性:値上げ/値下げによりどれだけ売上げが変化するか)を考慮し、価格変更後の総利益額が実施前よりも多くなることを目指す
心理的マジック:威光効果(宝石/美術品など高いほうが売れる)、端数効果(1,980円が安く感じる)、格付け効果(高級品/普及品扱い)、慣習効果(缶飲料は120円で慣習化)
②コミュニケーション力
ターゲット層の商品知名率
→純粋想起:カテゴリーを聞いただけでわかる
助成想起:商品名リストを見た段階で思い出す
内容想起:商品の特性までわかる
③流通力
対象チャネルの取扱店率
④販促力
販促頻度、ターゲット層の購入頻度