戦略「脳」を鍛える 御立 尚資(東洋経済新報社)
1.インサイトとは
勝てる戦略の構築に必要な”頭の使い方”(定石を学ぶだけでは勝てない)
(1)インサイトの要素
インサイト=スピード+レンズ
①スピード
スピードを早くする思考の仕方
②レンズ
ユニークな仮説を作り出すための思考の仕方
2.思考の「スピード」を上げる
(1)スピードの上げ方
以下の①、②をシャドウボクシング
納得できるまでコンセプト(仮説)と観察した事実(検証)を繰り返す
①グラフ発想
現在の状況をビジュアルに捉え、仮説を生み出す
図ではなくグラフ(数式をモデル化)する事で、変数を変えてシミュレーション発想ができる
ただし、平均化した情報では個々の実態は浮かんでこないため注意が必要
②パターン認識
過去の定石をイメージで思い出し、仮説をすばやく検証する
(2)効率的なパターン認識
過去の定石はそのコンセプトのみをキーワード化して、頭の中で体系化して記憶しておく
①コスト系
スケールカーブ/エクスペリアンスカーブ(経験曲線)/コストビヘイビア(コスト構造を動的に見る)
②顧客系
セグメンテーション/スイッチングコスト/ロイヤリティ/ブランド
③構造系
V字カーブ/アドバンテージマトリクス/デコンストラクション(事業構造の見直し)
④競争パターン系
ファーストムーバーアドバンテージ(先行利益)/プリエンプティグアタック(先制攻撃)
⑤組織能力系
タイムベース競争(作業時間効率化、リードタイム短縮)/組織学習/ナレッジマネジメント
(3)コンセプトの戦略化
右脳主導で作ったコンセプト(仮説)は、最初は他人には理解しづらい「イメージ」
→左脳でチェックし、他人に説明できる論理にまで落とし込む
(4)両面思考で考える
例えば、「マクロ的な思考をしながら、ミクロ的な経済状況も観察する」など
(5)人への説明/メモをとるときに絵を描く
論理(言葉)だけでなく、イメージでも表現/把握する
右脳と左脳どちらを使っているか自体、常に俯瞰して意識できると良い
(6)考え方のレビュー
考えていることを全て声に出して、それを他の人に自分の頭の使い方のくせを指摘してもらう
3.三種類のレンズで事象を見る
(1)拡散レンズ
①ホワイトスペースを活用する
市場だと思っていないところも経営戦略上余地がないか考える
②バリューチェーンを広げる
自社以外の企業活動領域(原材料、アフターサービスなどの関連会社など)へ広げて見る
③進化論で考える
長い時間軸でマーケットを見る
(2)フォーカスレンズ
①ユーザになりきる
ユーザの「不」を知る(不平、不快、不信、不都合)
②テコをきかせる
動かすと他も一緒に動くポイントを探す(たとえば、プロスポーツ選手=スポーツメーカーの広告塔とした購買層拡大)
③ツボを押さえる
最小限の資源投入で最大の効果が得られる戦略を探す
(3)ヒネリレンズ
①逆バリする
不況の時に投資したり、経済性の悪い地域に投資し、マーケットを独占する
②特異点を探す
全体傾向から外れた特異のグループを観察し、問題解決策を発見する
③アナロジーで考える
Aで成り立ったものがBでも成り立つかどうか考える
物事のメカニズムを5W1Hで考え、その対象をシフトして考えてみる
(例えば、What:焼きそば→コーヒー、When:放課後→仕事の合間、Who:高校生→ビジネスマン)
4.インサイトを生み出す「頭の使い方」を体験する
(1)PNIルール
議論の順番はポジティブ(P) 、N(ネガティブ)、I(インタレスティング)
(まずポジティブに意見を出し合い、その上ネガティブ要素を洗い出し、最後に意見の面白い所を見つける)